船橋市議会議員 齊藤 和夫

私は、動物の殺処分をなくし人と動物が共生できる社会を実現したいとの思いから、2016年の船橋市議会議員選挙に立候補しました。当時は、動物は票にならないと周囲の多くの人から忠告されましたが、予想外に多くのご支持をいただき、お陰様で現在、議員として2期目を務めております。しかし、畜産動物の置かれている状況については、恥ずかしながら最近までほとんど知らずに過ごしてきました。

最近になって知ったことのひとつが、畜産動物飼育における世界的な動向です。アニマルウェルフェア(動物福祉)という言葉があります。動物も人間と同じように感受性を持つ存在であり、生理的必要や種固有の行動の要求を満たすべきであるという考え方です。英国では1968年に制定した農業法で、初めて家畜の福祉を具体的な施策として盛り込み、1979年には、家畜の飼育管理の基本として①空腹・渇きからの自由、②不快からの自由、③痛み、損傷、病気からの自由、④正常行動を表現する自由(正常な行動のための十分な空間、適切な環境、習性に応じた飼育法等)⑤恐怖・不安からの自由の「5つの自由」を定めました。この基本原則はその後、EUその他の国々で多くの立法の基礎となっています。例えばEUでは、ストール・クレート(檻)による閉じ込め型飼育、繋留飼育、過密からの解放を強く求めています。米国でも州法により畜産動物保護法が次々と採択されています。こうした法規制や消費者意識の高まりに応じて、各国の主要な食肉加工会社も閉じ込め型飼育の廃止を進めていますが、日本はこの分野では、残念ながら後進国と言わざるを得ないのが現状です。先ごろ開催延期が決まった東京オリンピック・パラリンピック大会は、持続可能性に配慮した運営の一環として、飲食サービスの4つの調達基準(①食材の安全、②環境保全、③労働安全、④動物福祉)を掲げています。これらの基準のうち①から③については、日本でも関係法令が整備されていますが、④については畜産技術協会が策定した飼養管理指針の順守が求められているものの、この指針では、例えば繁殖雌豚のストールについては推奨される広さが示されているのみです。

私は畜産について詳しくは知りませんが、いくつかの文献を読んだ限りでは、畜産業は飼育管理と餌の改良により生産能力を最大化すること、つまり、経済合理性を徹底して追求することにより発展してきたと言って間違いなさそうです。そのおかげで、安全、安心で安価な畜産物が大量に市場に送り出され、私を含む消費者はその恩恵にあずかってきました。しかし、その一方で、ほとんどの人が畜産物の生産過程に関する情報から遮断されてきたのも事実だと思います。例えば、スーパーなどの小売店に陳列されている豚肉を見て、そのほとんどがこのウエブサイトで取り上げられている妊娠ストールで繁殖させられた豚であることを想起できる消費者は、ほぼいないといって良いでしょう。

広く浸透している飼育方式に転換をもたらすことは簡単ではないでしょう。経済合理性を追求してきた飼育方式の転換は、生産コストの増加につながり、家計を圧迫する可能性があることも考えなくてはなりません。しかし少なくとも、動物福祉に配慮して生産された豚肉を消費者が選択できる自由は保障されるべきではないでしょうか。消費者の声は、そのような変化をもたらす原動力となるはずです。まずは、いま畜産動物が置かれている状況に関心を持つことから始めましょう。私は畜産物を購入するとき、それがどのようにして私たちの手に届いたのかに思いを巡らせ、周囲の人たちに伝えていきたいと考えています。

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